運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
 たいまつを掲げて前に出たのは、騎士の制服をまとう茶髪の若い男だった。黒髪の彼より柔らかな雰囲気だが、騎士らしい凛としたたたずまいをしている。

「歩けますか?」

 おびえさせないようにと配慮したのか、茶髪の男は柔らかく話しかけてきた。

 セレナは少しずつ今の状況を把握しようとした。まずはこの洞窟から抜け出すことが先決だ。大丈夫。怖くない。心を落ち着けて、差し出された手に応じた。

「あ、ありがとうございます。洞窟は慣れてるんですけど、足もとがぬるぬるして……」
「慣れてる?」

 茶髪の青年──テオが怪訝そうに首をかしげる。

「か、家族が……こういう場所が好きで」

 苦しい言い訳に、ますます彼は不思議そうな顔をした。しまった。余計に怪しまれたかもしれない。

「ここは長く閉ざされていた場所です。空気もよどんでいますから、早く外へ出ましょう」

 セレナは黙ってうなずき、その手をしっかり握った。

 出口まではそれほどかからなかった。あきらかに人の手が加わっている階段をのぼり、洞窟を抜けた瞬間、太陽の光が降り注ぎ、思わず目を細めた。

 目の上に手をかざしながら、辺りを見回す。広がる景色は一面森で、正面には巨木がそびえ立ち、透き通るような風に、枝の葉がさわさわと揺れている。

「……きれい」

 思わずため息をもらす。なんて豊かな自然だろう。こんな場所が、まだ世界には残されていたのだ。

 では、いま出てきた洞窟は、何かの遺跡の可能性もあるのだろうか。セレナは振り返り、息を飲んだ。

 岩で覆われた洞窟の入り口には、石で作られた円形の柱に支えられる門があった。太くて短い柱は上部に向かうにつれて細くなり、装飾は少なく、浅い溝が彫られている。

「ずいぶん……古いものだわ」

 セレナはところどころ崩れている柱にそっと触れてみた。
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