運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
「それに……アクロポリスの建て方に、とても似てる。もし……ここが古代文明の一つだとしたら……、ギリシャ……ううん、ローマの可能性もあるわよね。でも、あの人たちの言葉はギリシャ語でもラテン語でもない……って、どうして私、知らない言語が理解できてるんだろ……」

 ぶつぶつつぶやいていると、後ろから声が飛んでくる。

「なにを言ってるんですか?」

 話しかけてきたのは、テオだった。セレナはあわてて首を振った。

「えっ、いえっ、なんでもないです! それより……ここって、どこですか?」

 スカートを揺らしてぐるりと回りながら問うと、眉をひそめる黒髪の男と視線が交わり、思わず胸がはねた。すぐさま目をそらした瞬間、テオが答える。

「アルナリア王国領、ベナールです。……ご存知ありませんでしたか?」

 セレナは思わず首をかしげた。

「アルナリア……? 聞いたこと、ないです」

 卒論の調べで、世界地図を何度も見返した。それこそ、世界各地の古代地図まで。しかし、ヨーロッパの片隅にだって、『アルナリア』なんて国はなかったはずだ。

「……妙だな」

 そうつぶやいたのは、黒髪の男だった。

「アルナリアは千年以上の歴史がある。それを知らないとは、やはりおまえは……」

 すぐさま男がセレナに詰め寄ろうとするのを、テオが一歩進み出て、やんわりと制した。

「アレク様、この方は気を失っていただけで、危険な様子はありませんでしたよ」
「だからといって、信用はできん」
「お気持ちはわかりますが、ここはひとまず、落ち着きましょう」
「いつだって落ち着いている」

 黒髪の男……アレクと呼ばれた青年は、鼻を鳴らすと、顔を背けた。

 セレナは胸を押さえ、ホッと息をつく。彼は人を魅了する容貌を持っているのにもったいない。この威圧感はなんとかならないのだろうか。

「あの……この場所は、どういったところなんですか?」

 尋ねると、テオが穏やかに答える。
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