運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
 ふかふかのベッドが名残惜しくてそう答えると、リディアがにっこりと微笑む。

「私もセレナさんとまだまだお話したかったわ。本当に楽しくて。きっとまた会えますわよね?」
「ええ……、きっと」

 次があるかはわからなかったが、笑顔を浮かべると、リディアは祈るように手をぎゅっと握りしめてくる。

「約束ですわよ」
「……はい。楽しみにしています」

 うなずくと、いつの間にそんなに仲良くなったのかとあきれるようにアレクがため息をつき、「行くぞ」と玄関を出ていく。

 アレクの背中を追いかけて外へ出ると、屋敷の前にはすでに馬車が用意されていて、出発準備を整えたテオと騎士たちが集まっていた。

「セレナさん、馬車へどうぞ」

 テオに手を引かれて馬車に乗り込むと、リディアが小さな籠をかかえて駆け寄ってくる。

「焼きたてのパンをお包みしましたわ。召し上がってくださいね」
「あ、ありがとう」

 籠を受け取っていると、アレクが白馬にまたがる。途端に緊張感が漂う。朝日を浴びる彼は、近寄りがたいほどに凛々しい。少し長めの前髪を風になびかせながら、騎士たちの先頭に立つ。

「王都へ早急に戻る。連日の魔物討伐で疲弊はあるだろうが、もうしばらくこらえてくれ。ではゆくぞっ!」

 号令とともに、騎士たちの士気を高める声があがり、馬車が動き始める。セレナは窓から顔を出し、リディアに手を振った。彼女もまた、「お気をつけて」と手を振り返してくれた。

 いつかまた……会えるだろうか。王都へ行くことは決まっていても、これからどうなるかわからない。セレナは不安をかかえながらも、籠をそっと抱きしめた。
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