運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
 アレクは何かと忙しそうで、直接話す機会はほとんどない。あったとしても、いつも威圧的だから、落ち着いて話せる気もしない。これでは好きな考古学の勉強にはなかなか辿り着けないし、興味の引く話があるとすれば、王太子の婚約者に起きる不幸ぐらい……。

 しかし、エマは言葉を濁すから、詳しい話は聞き出せなかった。その矢先、クラリスから招待状が届いて、いっそ、彼女から直接聞くのも悪くないと、招待を受けることにしたけれど。

 セレナはエマに、「いってきます」と声をかけると、公爵邸からやってきた従者に手を支えられて、馬車に乗り込んだ。

 すみやかに馬車が走り出すと、車窓にかかるシルクの幕がちょっとした風でゆらりと揺れ、第一騎士団の騎士が馬に乗ってついてくるのが見えた。監視役はひとりらしい。とはいえ、逃げ出したらあっという間につかまるだろう。

 セレナは一つため息をつく。帰る家がないのは、思ったよりも苦しかった。今日はこの生活を変えられるような一日にできたらいい。

 公爵邸は王都の中心街にあり、王宮からは目と鼻の先にあった。気取った足取りで馬たちは庭園に入ると、玄関前でぴたりと足並みをそろえて止まる。

 セレナが馬車を降りると、待ち構えていたクラリスが目を輝かせて両手を伸ばしてくる。

「お待ちしておりました、セレナさん。わ……私、お友だちがおりませんので、来てくださってうれしいです」
「こちらこそ、ご招待くださりありがとうございます」

 頭を下げると、クラリスはもどかしそうに手を引く。
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