運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
「さあ、中へ入ってください。パーティーではもっとお話したかったのですけど、すぐに帰られたと聞いて、残念に思っていたんです」
「あのような場に慣れておらず、ごあいさつもせず、失礼しました」
「仕方ありませんわ。アードラー伯爵家の人たちはいつも張り合ってばかりで、辟易するのは当然です」

 クラリスは少々、ムッとした。そんな顔も愛らしいから、怒っているようには見えないけれど。それにしても、アレクと同様、クラリスもまた、アードラー家をよく思っていないようだ。

「旧王家の流れを汲む名家と聞きました。ご令嬢を王太子妃にと願われてるようですね」
「アレク様はまったく相手にされないので、セレナさんの美しさに嫉妬なさったんだと思います。すんなり領地へお帰りになったようですし、アードラー家のことなど忘れて、今日は楽しいお話をしましょう」

 どうやら、アードラー家は王都には暮らしていないようだ。あのリチャードという男とも、当分顔を合わせることはないだろう。

 セレナは手を引かれたまま、屋敷の中へと進んだ。宮殿ほどとは言わないまでも、公爵邸はほれぼれするほどに豪華で美しかった。

 大理石の床に、赤い絨毯。出迎えの使用人たちもかなりの人数で、お辞儀をする様子に荘厳さも感じられる。

 セレナは興味津々に辺りの様子をうかがいつつ、優雅で品のある部屋へと案内された。すでに来客を迎える準備の整った空間は、レースのカーテン越しに穏やかな光が差し込み、甘い花の香りに満たされていた。
< 47 / 177 >

この作品をシェア

pagetop