運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
 言うが早いか、ガチャリと扉が開き、テオと数人の騎士団員が姿を現す。落ち着きを保ってはいるが、顔には焦燥がにじんでいる。

 彼はセレナの姿を見つけ、わずかに目を見開いた。何か言いかけるも、すぐにかしこまって報告する。

「たった今、ノーデルにゴーレムが出現したとの知らせが入りました。第一騎士団はすでに派兵の準備に入っております。大至急、魔術師団の派遣許可をお願いいたします」
「おやおや、ゴーレムですか。厄介ですねぇ。……仕方ありません。第一魔術師団を派遣しましょう。副団長にそのように伝えてください。私は今、ご覧の通り、取り込み中ですので」
「ご協力ありがとうございます」

 テオは深く一礼したあと、後ろに控える騎士団員に指示を出す。騎士団員があわてて駆け出ていくのを見送ったあと、彼はほっと息をつき、柔らかな表情をセレナへ向けた。

「セレナさんはここで、何を?」
「魔術の訓練ですよ。彼女はアルナリアの救世主になるべくして生まれた存在ですから」

 そう答えたオリオンを、セレナはぽかんとして眺めた。彼はどうも、冗談か本気かわからないことを真顔で言うくせがあるらしい。

「救世主ですか?」
「あなたも先日、ご覧になったでしょう。セレナ様の魔力は想像以上でした。ゴーレムなど一瞬にして粉砕してしまうでしょうが、それでは解決しないと歴史が証明していますのでねぇ」
「というと?」

 煙に巻かれたような顔つきのテオが首をかしげる中、セレナは備忘録の記述を思い出し、ハッと息を飲む。

 もし、イザベラの力がこの体の中にあるのなら、ノーデルの町をゴーレムから守ることができるかもしれない。
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