離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
 夜の王宮はまばゆいばかりに輝いていた。
 いくつもの外灯が石造りの壁を柔らかく照らし、門から続く石畳の道を馬車が行き交っている。
 玄関ホールでは多くの賓客が挨拶を交わしたり談笑したりしている。
 白と金を基調にした内装で、高い天井から吊るされた豪華なシャンデリアはまばゆく輝き、磨き上げられた大理石の床に赤い絨毯がまっすぐ大階段へ向かって広がっている。
 大階段の向こうがパーティ会場だ。

 エントランスでフィリクスは腕を組むようアリシアに促す。
 アリシアはそっと彼の腕を取る。
 そしてふたりは会場へ足を踏み入れた。

「まあ、あれはレオフォード侯爵様では?」
「パーティに顔を出されるとはめずらしい」
「となりの令嬢はどなたかしら?」
「奥様だろう。ご結婚されていると聞いたぞ」

 アリシアは周囲からの視線に少し怯えた。
 けれど、フィリクスのそばにいればきっと大丈夫だと自分を励ます。

「久しぶりに拝見するけど侯爵様は本当に素敵ね」
「ええ、本当に。お近づきになりたいわ」
「お顔を拝見するだけでもいいわ」

 女性の熱い視線に気づいたアリシアは、なんとなく胸の奥がちりっと痛んだ。

(いやだわ。私ったら、どうしてこんなにもやもやするのかしら)

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