離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
「わざとでしょう? 私と旦那様の部屋が一緒だったのは」
アリシアはソファに腰かけると、紅茶を淹れているエレナに向かって言った。
するとエレナは満面の笑みで、悪びれもせずに言った。
「ご夫婦ですもの。何も問題ありませんわ」
「もう! 大変だったのよ」
「あら、何が大変だったのでしょうか?」
「えっ? えっと……」
途端に顔が熱くなる。アリシアは俯き、湯気の立つ紅茶をひと口飲んだ。
エレナはにこにこしながら見つめている。
「な、何もなかったわ。旅の疲れですぐに眠ってしまったもの」
「あらまあ。旦那様はさぞや残念に思われたでしょうね」
「旦那様は気づいていないわ。本当にセインが予約を間違えたと思っているもの」
「ふふっ、まさか。そこまで天然さんとは思えませんわ」
アリシアの脳裏にあの日のフィリクスのことがよみがえる。
壁際に追い詰められ、間近で見下ろされたときの、彼の熱を帯びた視線。まるで威嚇する獣のような姿だった。
思い出すと猛烈に恥ずかしくなる。
(おかしいわ。ダンスのときはあんなにぴったりくっついていたのに、それよりも、あの夜のことばかり思い出してしまう)
あのときのフィリクスを思い浮かべるたびに、鼓動が跳ね上がり、しばらくドキドキが収まらなかった。
アリシアはソファに腰かけると、紅茶を淹れているエレナに向かって言った。
するとエレナは満面の笑みで、悪びれもせずに言った。
「ご夫婦ですもの。何も問題ありませんわ」
「もう! 大変だったのよ」
「あら、何が大変だったのでしょうか?」
「えっ? えっと……」
途端に顔が熱くなる。アリシアは俯き、湯気の立つ紅茶をひと口飲んだ。
エレナはにこにこしながら見つめている。
「な、何もなかったわ。旅の疲れですぐに眠ってしまったもの」
「あらまあ。旦那様はさぞや残念に思われたでしょうね」
「旦那様は気づいていないわ。本当にセインが予約を間違えたと思っているもの」
「ふふっ、まさか。そこまで天然さんとは思えませんわ」
アリシアの脳裏にあの日のフィリクスのことがよみがえる。
壁際に追い詰められ、間近で見下ろされたときの、彼の熱を帯びた視線。まるで威嚇する獣のような姿だった。
思い出すと猛烈に恥ずかしくなる。
(おかしいわ。ダンスのときはあんなにぴったりくっついていたのに、それよりも、あの夜のことばかり思い出してしまう)
あのときのフィリクスを思い浮かべるたびに、鼓動が跳ね上がり、しばらくドキドキが収まらなかった。