離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
 人々が騒いでいると、グレゴリーの命を受けた兵士たちがぞろぞろやって来て周囲を制止するように取り囲んだ。

「騒ぐな! これは領主様のご英断だ」
「ふざけんな! どこが英断だよ!」

 兵士のひとりが前に出る。
 どうやら兵士の長らしく、彼は胸を張って言い放った。

「集めた金でこの町に娯楽施設を建てるのだ。そうすれば国中から観光客が集まり、町は潤う。それに伴って税収も増え、お前たちの暮らしも今より豊かになる。どうだ? 嬉しいだろう」

 人々が呆気にとられ、誰もが驚愕の目で見つめている。
 兵士が笑みを浮かべながら続ける。

「前領主の思考は古臭い。これでは町の発展は見込めない。新しい領主様のお考えだ」

 人々は一瞬、戸惑った。中には「これはいいことなのか?」と首を傾げる者もいる。兵士はにんまり笑って続ける。

「数年後には国中から人が集まる。ここは王都の次に発展した町になるだろう」

 すると、誰かが声を上げた。

「それまで俺たちの生活はどうなるんだ? 給金の半分も失って、どうやって生活すればいいんだよ」

 すると「そうだ、そうだ」と次々声が上がった。
 兵士は眉をひそめて言う。

「我慢しろ。お前たちの未来のためだ」

その言葉に、人々は一気に不満を口にした。

「それまでどうやって生きろってんだ?」
「うちには病気の両親がいるのよ。薬代が払えなくなるわ」
「家の修繕もできない」
「肉が食えなくなる」

 険しい空気の中、兵士たちは睨みをきかせて無理やりその場を制した。

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