離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
 その日の夕方、メルアの店には常連客たちが集まっていた。
 その場では昼間の通達の話題で持ちきりだった。

「信じられるか? この店まで立ち退きの対象だってよ」
「10日以内だって? おかしいだろう」
「業者はすでに取り壊し作業の準備をしているそうだ」

 カウンターの奥で湯気を立てるポットを抱えたメルアに、客が険しい表情で話す。

「この店はメルアのじいさんの代からあるだろう。こんな終わり方ってないよ」

 するとメルアはカップにお茶を注ぎながら嘆息して言った。

「聞いた話だと、広場からこのへん一帯までぜんぶ取り壊すつもりらしいね。なんでわざわざ町の中心部を造り変える必要があるのか……」

 メルアは険しい表情のまま、全員に告げる。

「とにかく、あたしは断固反対だ。何があっても店を守るよ」

メルアの言葉に触発された客たちはみな、声を上げた。

「そうだそうだ!」
「俺たちも抗議しようぜ」
「みんなで声を上げれば怖くない」

 みんなが血気盛んに盛り上がる中、メルアは近くにいるディーンに話しかけるように言った。

「それより、あたしはアリシアが心配だよ。領主様は本当に、亡くなったのだろうか?」

 メルアの言葉にディーンは沈黙したまま眉をひそめた。

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