離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
「ほう、侍女は私を理解しているようだな」

 エレナはアリシアの前で両手を広げて、グレゴリーをじっと見据える。
 グレゴリーはふんっと鼻を鳴らし、振り上げた手をゆっくり下ろす。そして優越感に満ちた笑みを浮かべながら、アリシアを見下ろして言った。

「アリシア、お前は明日この家を出るんだ。マンブル伯爵には前から話をつけてある」
「そんなっ……!」
「結婚式には私も出席する。ここの侯爵と違って、あちらは盛大に挙式をおこなってくれるぞ。女は白いドレスを着たいのだろう? ありがたく思うがいい」
「そんなの、受け入れられません」
「だが、お前はそうせざるを得ない。確か、メルアだったか?」

 アリシアはどきりとして目を見開く。
 その反応を楽しむかのように、グレゴリーは口角を上げ、不気味に笑った。

「立ち退き命令を無視して抗議しているらしい。ちょうどいいから見せしめにしてやる。町の広場で鞭打ち刑とは一興ではないか」
「や、やめて……そんなこと」
「だが、まあ、お前が素直にマンブル伯爵のもとへ行くなら、考え直してやってもいい」
「……卑怯だわ」
「これは取引だ。可愛い姪っ子よ……メルアの顔が判別できなくなるまで鞭で打たれる様子を想像してみるといい」

 グレゴリーの冷え切った声が静かに響き、アリシアの胸に恐怖がせり上がる。息が詰まるほどの圧迫感が、胸の奥を締めつけた。

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