離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
 アリシアが自室に戻ると、エレナが頭を下げて謝った。

「おそばを離れないと言っておきながら、申し訳ございません」
「謝らないで。私が勝手にしたことだもの。叔父様相手に何を言っても通じないのに、感情が抑えられなかったわ」
「お気持ちはわかります」

 グレゴリーの一連の企ては、アリシアが嫁いだ当初から練られていたのだろう。
 フィリクスはどこまで察していたのか、アリシアにはわからない。
 ふと、王都へ向かう道中でフィリクスから聞いた言葉が胸によみがえる。

『君の叔父が過去にしてきたことを、俺はよく知っている。だから、何があっても俺が君を彼から守る』

 あのときは、自分を守ってくれるという意味だと、アリシアは思っていた。
 その言葉には、侯爵家も含まれていたのだろう。
 そして、このたびの視察に出かけるときのセインとのやりとりも、何か含みが感じられた。

(私の知らないところで、旦那様は何か重要なことを調査して……?)

 アリシアはそっと首を振った。
 憶測で物事を考えても意味はない。
 今はそれよりも、フィリクスが戻るまでこの家と領地をどうすべきか考えることだ。

 アリシアは覚悟を決めて、エレナに伝えた。

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