離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
 ビュッと空を裂いて飛んできた一本の矢が、振り下ろされた鞭を弾き飛ばした。

「えっ……?」

 兵士の気の抜けた声が響く。
 異変に気づいたディーンが恐る恐る目を開けると、鞭を持っていた兵士はその場に尻もちをついて、呆然と宙を見上げていた。

 矢の飛んできたほうへ人々が一斉に振り向く。
 広場の少し離れたところに、弓をつがえたまま立っていたのはフィリクスだった。
 どうやら兵士の弓を奪ったらしく、持ち主の人物はフィリクスのとなりで唖然としていた。

「狩りは久しぶりだが、腕は鈍っていないようだ」

 フィリクスは軽い口調でそんなことを言う。
 太陽の光を浴びて立つその姿はまばゆく、堂々たる風貌だった。

「領主様……!」
「領主様が、生きていらっしゃった!」
「私は信じていたよ!」

 広場がどよめきに包まれ、歓声が上がった。
 人々の声は次第に熱を帯び、兵士たちは顔を見合わせて動揺を隠せない。
 人々が自然と道を開けて、その中をフィリクスがゆっくりと進む。
 彼はディーンの前に立つ兵士たちのもとへ、まっすぐ向かった。

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