離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
 アリシアが去ってから、侯爵領ではグレゴリーによる圧制がすでに始まっていた。
 重税と立ち退きに抗議する声が、町のあちこちで上がっている。
 その中に、メルアとディーンの姿もあった。

「いい加減にしろよ! 俺たちの暮らしを、なんだと思ってやがる!」

 ディーンが先頭に立って叫ぶと、兵士たちの顔色が変わった。
 怒気を露わにした兵士が、一斉に武器を手にして突き出す。

「見せしめだ。逆らった愚か者の末路を全員の前で晒してやろう」

 ディーンは強引に縛り上げられ、広場の中央に突き倒される。
 周囲で見守っていた人々が思わず声を上げ、前へ出ようとするが、兵士たちが容赦なく遮った。
 ひとりの兵士が領民たちの前に立ち、鞭を手にして声を上げる。

「グレゴリー様には死なない程度に拷問していいと命じられている。だがしかし、うっかり加減を間違えてしまうこともあるだろう。何、よくある話だ」

 兵士がにんまり笑うと、ディーンはすかさず声を上げた。

「殺す気満々じゃねーかよ!」
「ハハッ……威勢のいい奴だ。さぞや、いい悲鳴を上げてくれるだろう」

 ディーンは冷や汗をかきながら、兵士を睨みつける。

「もったいない。まだ若いのにな。お前の人生はここまでだ」

 鞭が振り上げられる。
 ディーンは目をぎゅっと閉じ、歯を食いしばった。
 その瞬間――。

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