離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
 セインがおもむろに口を開く。

「デートル伯爵のワイン事業というのは……?」
「見せかけだ。奴も黒だった」
「やはり、そうですか」
「だが、これでグレゴリーを追い詰められる」

 セインは頷きながら、声をひそめるように続ける。

「ついでに、偽の死亡証明についても追及しなければなりませんね」
「ああ。根こそぎ暴いて奴を地獄に堕としてやる」

 フィリクスは静かに立ち上がり、無言のまま扉へ向かう。
 そして、手をかけたまま振り返らずに言った。

「今夜、発つ」
「では、くれぐれも先走ることのないようにしてください」
「わかっている」

 フィリクスはすぐに馬車を走らせ、アリシアのいるマンブル伯爵領へ向かった。
 セインはすべての手配が整い次第、追って合流するつもりだった。

(まあ、先走るだろうな。今の旦那様は奥様のことで頭がいっぱいだ)

 セインはフィリクスの脱いだ上着を使用人に渡す。

(それにしても、せっかく初夜の機会を差し上げたのに、おふたりは何もなかったのか)

 セインは真顔でそんなことを思っていた。

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