離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
 遠くから人々のざわめきと、衛兵たちの威勢のいい声が響いてくる。

「侵入者を捕らえろ!」

 怒鳴り声が聞こえてきて、アリシアの胸に不安が走った。

「あっ……どうしましょう?」
「そうだな。もうすぐセインが合流するはずだ。それまで……」

 アリシアはハッとして、フィリクスの腕をぎゅっと掴む。

「エレナが、まだ……!」

 その声に、フィリクスはすぐさま答える。

「大丈夫。先に彼女と接触してある。今は別の場所で待機しているはずだ」

 アリシアはその言葉に、ふっと肩の力が抜けるのを感じ、安堵の吐息をこぼした。
 全身を張りつめていた緊張が、少しだけ緩んでいく。

「アリシア、まだやるべきことがある。すべて片付くまで、待っていてくれるか?」
「それは、叔父様の件ですか?」
「ああ、そうだ。必ず終わらせる。だから……」
「旦那様、私もご一緒していいですか?」

 フィリクスは驚いたようにアリシアを見つめた。

「……アリシア」
「あなたと離れたくありません。そして、この目で叔父様の真実を見届けたいのです」

 フィリクスはしばらく沈黙したあと、ふっと笑い、静かに頷いた。

「わかった。ともに行こう。すべて終わらせるために」

 フィリクスが差し出した手を、アリシアは迷いなく取った。
 指先を絡めるようにしっかりと握り返し、ふたりは歩き出す。
 すべてに決着をつけるために――。

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