離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
 ところが、セインの発言はこれだけに留まらなかった。
 彼は次々と用意していた言葉を放つ。

「あなたの罪はそれだけではない。領境で夜盗事件を繰り返し、自作自演で侯爵領の治安を悪化させようとした。領民の不安を煽り、侯爵様を事故死させて、あなたが<救世主>として乗り込む算段だったのでしょう」

 フィリクスがセインの横で言葉を引き継ぐ。

「しかし思惑は外れたようだ。俺は領民たちと信頼を築いた。妻のおかげでな」

 そう言ってわずかに振り返った視線の先には、アリシアが毅然と立っている。
 グレゴリーはその姿を睨みつけたが、フィリクスが一蹴するように言葉を重ねた。

「さぞや驚いたことだろう。疑心に揺れた領民たちが、新しい領主の命に背き、反抗したのだから。男爵殿は力で抑えつけるしかなかった。しかし、圧制は逆効果だ。民なくして執政などできないのだからな」

 フィリクスの発言は、聴衆を驚愕の渦に巻き込んだ。

「おいおい、侯爵家の乗っ取りか。いくら何でもそれは重罪だろう」
「男爵がどれだけ悪人でも、さすがにそれは……」

 ざわめく聴衆に向かって、グレゴリーは声を荒らげる。

「私は侯爵閣下と契約を結んでいたのだ! 王も認めている! これは違法ではない!」

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