離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
 その場に緊張が走る。
 セインは一歩前に出ると、さらにグレゴリーを追いつめる。

「もう一つ。男爵、あなたは違法薬物の闇取引をおこなっている。拠点はデートル伯爵領で、仲介者はマンゲル商会だ」

 グレゴリーはぎょろりと目を見開いてセインを睨みつける。

「そんなものは知らん!」
「言い逃れはできない。あなたの鞄から押収した証拠がある」
「知らん! 知らんぞ! 私は何も知らん!」

 グレゴリーは逃げるようにフィリクスの横を通り過ぎ、セインを押しのけるようにして大聖堂の扉へと向かった。
 しかし、王宮から派遣された騎士たちがとっさに立ちはだかる。

「な、何だ貴様ら! 私は男爵だぞ! 失敬な!」

 騎士たちは一斉に飛びかかり、グレゴリーを捕らえる。

「やめろっ! 貴様らこの私に無礼を働いて、どうなるかわかっているのか?」

 この期に及んでまだ自身が劣勢であることに反発するグレゴリーを、呆れた目で見つめるアリシア。その視線に、グレゴリーが気づいて声を荒らげた。

「アリシア! 恩を仇で返しやがって!」

< 186 / 208 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop