離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
「マンブル伯爵、あなたもだ」

 役人の指摘に、マンブル伯爵が狼狽えながら声を上げた。

「わしはグレゴリーに巻き込まれただけだ! しかも騙されたのだぞ。侯爵殿が亡くなったからアリシアと再婚できると。わしは被害者なんだ!」

 マンブル伯爵は騎士たちに捕らえられ、連れ出されていく。
 そのときグレゴリーと目があった伯爵は、彼に怒号を浴びせた。

「男爵のせいでわしの人生が台無しだ!」
「何を言う? この意地汚い少女趣味が! 貴様はどれだけ若い女を孤児院からさらったのだ?」
「さらったのではない! 引き取って大事に育ててやったのだ」
「飽きたら売り飛ばしたのだろう? 貴様のやっていることに比べたら、私など軽いものだ」
「乗っ取りという重罪を犯した奴が戯言を!」

 逃げ惑う人々の中で、ふたりの怒号がひときわ目立った。
 しかし、もう彼らのことなど誰も眼中になかった。自身が逃げることに精一杯だったから。

 フィリクスとアリシアの背後で、セインがぽつりと呟く。

「醜いですね」

 フィリクスは「ああ」と短く答えた。

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