離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
 フィリクスは急ぎ馬を駆って屋敷へと戻った。
 玄関ホールに入るなり、出迎えたセインとエレナに短く告げる。

「今夜は、妻と晩餐をともにする」

 その言葉に、セインはいつものように冷静な表情を崩さず静かに一礼した。
 一方のエレナはぱっと表情を輝かせて、両手を胸の前で合わせると、喜びを隠すことなく声を上げた。

「まあ! では、すぐに準備いたしますわ!」

 それを合図にエレナは満面の笑みで使用人たちに声をかけ、屋敷中が忙しなく動き始めた。

 厨房には次々と人が出入りし、ひさしぶりの活気が戻ってくる。
 料理人は手際よく調理をし、使用人たちはダイニングルームのテーブルに綺麗なクロスを広げると庭園の花を摘んで飾りつけをおこなった。
 誰もが楽しそうにしながら、笑顔で作業をしている。

 その様子を遠目に見ていたフィリクスは首を傾げた。

(そんなに喜ぶことだろうか?)

 彼には使用人たちが嬉しそうに働く姿がいまいち理解できなかった。

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