離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
 ふたりのあいだには特に会話がなく、ダイニングルームはしんと静まり返っている。
 セインは真顔で微動だにせず、エレナは笑顔で立っている。
 他の給仕たちが作業をする音とナイフとフォークが皿に触れる音だけが室内に響き渡った。

(き、気まずいわ。何かお話したほうがいいかしら?)

 アリシアは少しずつ食事をしながらそわそわしていた。
 しかし、ふと思い返すとその必要もないような気がした。

(離婚するのに余計なことを話す必要はないわね)

 しばらくだんまりの食事が続いたあと、突如フィリクスが口を開いた。

「町はどんな様子だ?」

 アリシアは自分に話しかけられたのではないと思い、黙ったままだった。
 しかしセインが何も答えないので、ハッとして顔を上げた。
 アリシアの視線がフィリクスとぶつかる。
 彼はじっとこちらを見ていた。

 慌てて返答をする。

「はい、あの……とても、活気がありました。感謝祭が近いので」
「そうか。もう、そんな時期か」

 アリシアの胸中は混乱している。胸の鼓動がバクバク鳴り響き、手に汗をかいてフォークを落としそうになった。

(落ちついて。大丈夫よ。世間話をすればいいだけ。ほら、いつもお店でみんなと話しているみたいに)

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