離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
 フィリクスは視線を手もとの皿に落とし、食事をしながら続けた。

「稼いだ金はどうしている?」
「えっ……」
「別に取り上げるつもりはない。ただ、君の身のまわりの物はこの家の金で賄うべきだ」
「……はい。あの、きちんと貯蓄しています」
「何のために?」
「えっと……」

 まるで尋問を受けているようだ。

 自分はすでに離婚を望んでいると伝えてある。ならば、貯蓄の理由など言わずともわかっているはずだ。それをあえて訊いてくるのは、どういうつもりなのだろうか。

「何かあったときのために、備えておくのは当然だと思っています。たとえば旦那様は騎士様ですから、再び戦地へ赴くことになれば、武器や防具の新調も必要になりますし、人を雇うなら人件費もかかります」

 アリシアは努めて淡々と話した。
 あくまで自分のためではないということを強調する。あらゆる面から侯爵家の利益を想定し、備えているのだと伝えることに徹した。

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