離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
 アリシアは自室に戻るとソファに深く腰を下ろし、ぐったりと背を預けた。
 いまだ胸のざわつきは収まらない。

 立派な妻、などと言われてどう反応すべきかわからなかった。
 いつもの通り冷淡な態度を予想していたのに、まったく違った。

 そんなアリシアのそばで、エレナが微笑みながら紅茶を淹れる。

「いい傾向ですわね、アリシア様」
「え……?」
「旦那様がこうしてお話をされるのは、少しずつ距離を縮めたいというお気持ちの表れでは?」
「でも……急にどうして……」

 アリシアはふと思いたち、ぼそりと言う。

「もしかして、私が離婚を口にしたから?」

 その問いにエレナはふふっと笑って意味ありげに目を細めた。

「でも、それで急に態度を変えるなんて」
「それは離婚したくないという旦那様の意思表示ですわ」
「なぜかしら? 私のことなんてまったく興味なさそうだったのに」
「ですから、照れ屋さんなんですよ」
「信じられないわ。遠征に行っているあいだ一度も手紙の返事がなかったし、戻ってきてもまったく顔を合わせようとしなかったのに」

 アリシアはまだ納得できない。
 するとエレナは冷静に提案をした。

「離婚が成立するまでの1年間、様子を見てみるのはいかがですか?」

 アリシアは少し考えて「そうね」と短く答えた。

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