離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
おそらくフィリクスが離婚したくない理由は世間体が悪いからだろう。
アリシアはそう考えた。
彼は社交界であまり評判がよくない。
貴族同士の交流をほとんど持たず、遠征の任務があれば真っ先に名乗りを上げる。
華やかな世界よりも、剣を携え戦地に赴くほうを選ぶような人間だ。
無口で無表情なその態度は、社交界で人形のようだと揶揄されている。
そんな彼が離婚などすれば、噂はさらに悪化し、体裁も悪くなるだろう。
(そう。勘違いしちゃだめよ。旦那様はただ世間体のために離婚を避けているだけ)
アリシアは自分に強く言い聞かせた。
ある日の午後。
アリシアは庭園に面したテラスでひとり静かに刺繍をしていた。
暖かい陽光に包まれ、やわらかい風が吹く。鳥のさえずりが心地よく響き、久しぶりの休息を穏やかに過ごしていた。
とはいえ、手は止めない。
商品として売り出す品は、少しでも多く作っておきたい。
だから、どこへ行くにも刺繍道具を持ち、こうして時間のあるときに作業をする。
がさりと近くの植え込みから葉擦れの音がした。
驚いたアリシアが顔を上げて振り向くと、そこにはフィリクスが立っていた。
「旦那様?」
アリシアは慌てて立ち上がり、反射的に頭を下げる。
するとフィリクスは少し視線を泳がせながら、遠慮がちに申し出た。
「その……お茶を、一緒にどうだ?」
「えっ!?」
思いがけない誘いに、アリシアはすっとんきょうな声を上げてしまった。
アリシアはそう考えた。
彼は社交界であまり評判がよくない。
貴族同士の交流をほとんど持たず、遠征の任務があれば真っ先に名乗りを上げる。
華やかな世界よりも、剣を携え戦地に赴くほうを選ぶような人間だ。
無口で無表情なその態度は、社交界で人形のようだと揶揄されている。
そんな彼が離婚などすれば、噂はさらに悪化し、体裁も悪くなるだろう。
(そう。勘違いしちゃだめよ。旦那様はただ世間体のために離婚を避けているだけ)
アリシアは自分に強く言い聞かせた。
ある日の午後。
アリシアは庭園に面したテラスでひとり静かに刺繍をしていた。
暖かい陽光に包まれ、やわらかい風が吹く。鳥のさえずりが心地よく響き、久しぶりの休息を穏やかに過ごしていた。
とはいえ、手は止めない。
商品として売り出す品は、少しでも多く作っておきたい。
だから、どこへ行くにも刺繍道具を持ち、こうして時間のあるときに作業をする。
がさりと近くの植え込みから葉擦れの音がした。
驚いたアリシアが顔を上げて振り向くと、そこにはフィリクスが立っていた。
「旦那様?」
アリシアは慌てて立ち上がり、反射的に頭を下げる。
するとフィリクスは少し視線を泳がせながら、遠慮がちに申し出た。
「その……お茶を、一緒にどうだ?」
「えっ!?」
思いがけない誘いに、アリシアはすっとんきょうな声を上げてしまった。