離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
 フィリクスとアリシアはメルアの店に行き、そこに集まった人たちに事情を説明することになった。
 メルアはフィリクスの顔を見た瞬間、目を細めてわずかに首を傾げた。
 ディーンと荷馬車の男、それに店で働く者たち、そして常連客たちの前で、フィリクスはまず自己紹介をした。

「俺の名はフィリクス・レオフォードと言う」

 その瞬間、店内がざわついた。

「おい、レオフォードって……」
「領主様じゃないか!」
「まさか、なぜ……」

 戸惑いの声が響く中、フィリクスはさらに続けた。

「彼女は俺の妻、アリシアだ」

 その言葉に、店内のざわめきはさらに高まった。

「どういうことだ?」
「アリシアは独身じゃなかったの?」
「やっぱり嘘をついていたんだ」

 アリシアは唇を噛みしめて、全員の前で深々と頭を下げた。
 メルアは険しい表情をしたまま腕組みをし、フィリクスをじっと見つめる。
 ディーンは複雑な表情でアリシアを見つめている。

「このたびは、混乱させてしまうようなことをして、本当に申し訳ありません」

 アリシアが謝罪の言葉を口にすると、となりでフィリクスが遮るように言った。

「俺がすべて説明する。君がそうしなければならなくなった責任は俺にある」
「えっ……?」

 アリシアが顔を上げると、フィリクスは真顔でじっと見つめていた。
 
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