離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
 フィリクスは全員に向き直り、アリシアが外で働く理由を説明した。そのために、彼はまず侯爵家が3年前に財政難だったことも包み隠さず明かした。

 収入を得るために嫁いだばかりのアリシアを置いて遠征へ行ってしまったこと、そのあいだ侯爵家を維持するために外で働くことになったアリシアのこと。

 全員が神妙な面持ちでフィリクスの話を聞いた。

 アリシアは少々罪悪感を抱いた。
 外で働いていた理由は何もそれだけではなく、自立するためという理由のほうが大きい。しかし、フィリクスはすべて自分のせいだと説明したのだ。

 そして彼は事情を話したあと、全員を見わたしてから静かに頭を垂れた。

「侯爵家が今こうしてあるのは領民の方々のおかげだ。深く感謝している」

 フィリクスの話が途切れたあと、静寂が訪れた。
 全員が目を見開いたまま驚いた顔をしている。
 誰かがぽつりとつぶやく。

「領主様が、頭を下げた……?」

 それぞれが戸惑った様子で互いの顔を見合わせる。

 アリシアは驚きとともに、胸の奥がぎゅっと締めつけられるのを感じた。
 小さく震えながら、言葉が出てこない。
 ただ、自分の考えが浅はかだったのではないかと思い知らされる。

(旦那様とは背負っているものの覚悟が違いすぎる)

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