離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
ディーンは背を向けると、荷車を押して出ていく。
いつもなら「じゃあな」と言ってくれるのに、何も言わずに立ち去ろうとする彼に、アリシアは思わず呼び止めてしまった。
「ディーン」
すると、ほぼ同時に厨房の扉が開いて、メルアが声をかけてきた。
「アリシア、ちょっと手伝ってくれるかい?」
「あ、ええと……」
「あんたの旦那に土産を持って帰ってもらおうと思ってね」
ディーンの後ろ姿を目で追うアリシアに、メルアが近づいて肩を軽く叩き、そっと耳打ちした。
「失恋したんだ。そっとしておいておやり」
「えっ?」
驚いて目を瞬かせるアリシアに、メルアは複雑な表情で笑った。
アリシアは再びディーンのほうへ目を向ける。しかし、もうそこに彼の姿はなかった。
「あんたが幸せになることが、あの子の望みさ」
メルアの言葉に、アリシアは唇を噛みしめ、静かに頷いた。
ふたりの会話のやりとりを、フィリクスは厨房の陰からこっそり聞いていた。彼はふたりに背を向けたまま腕を組んでしばらくそこにいた。
やがて気配を悟られないよう、ふたりが戻ってくる前に店内へと姿を消した。
いつもなら「じゃあな」と言ってくれるのに、何も言わずに立ち去ろうとする彼に、アリシアは思わず呼び止めてしまった。
「ディーン」
すると、ほぼ同時に厨房の扉が開いて、メルアが声をかけてきた。
「アリシア、ちょっと手伝ってくれるかい?」
「あ、ええと……」
「あんたの旦那に土産を持って帰ってもらおうと思ってね」
ディーンの後ろ姿を目で追うアリシアに、メルアが近づいて肩を軽く叩き、そっと耳打ちした。
「失恋したんだ。そっとしておいておやり」
「えっ?」
驚いて目を瞬かせるアリシアに、メルアは複雑な表情で笑った。
アリシアは再びディーンのほうへ目を向ける。しかし、もうそこに彼の姿はなかった。
「あんたが幸せになることが、あの子の望みさ」
メルアの言葉に、アリシアは唇を噛みしめ、静かに頷いた。
ふたりの会話のやりとりを、フィリクスは厨房の陰からこっそり聞いていた。彼はふたりに背を向けたまま腕を組んでしばらくそこにいた。
やがて気配を悟られないよう、ふたりが戻ってくる前に店内へと姿を消した。