離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
「王宮のパーティ?」
「そのようですわ」

 どうやら王宮から侯爵家当てにパーティの招待状が届いたようだ。
 これまで王宮へはフィリクスひとりで赴いていたのに、今回はアリシアと一緒に行くというのだ。
 アリシアは驚き、そして同時に慌てた。

「どうしよう……私、そんな正式な場に出席したことが一度もないの」
「でしたら、これがアリシア様のデビュタントということになりますね」
「そんな……旦那様が招待されたパーティで私が主役になるわけにはいかないわ」

 デビュタントとは本来、初めて社交界デビューする令嬢に、男性が脇役としてエスコートをするというものだ。
 アリシアはデビュタントの前にフィリクスに嫁いでしまったので、その経験がなく、このたびのパーティがデビューとなる。

「旦那様はこの日のために、アリシア様のドレスを新調されるそうですよ。旦那様とダンスをする絶好の機会ですわね」
「旦那様とダンス……?」

 アリシアは急に落ち着かなくなり、そわそわと視線を泳がせる。

「ど、どうしよう。私、ちゃんと踊れるかしら?」
「アリシア様、基礎はしっかり身についていらっしゃいますわ」
「でも、旦那様に恥をかかせたくないの」
「でしたら、出発までしっかり練習いたしましょう。私でよろしければ、お付き合いしますわ」
「ええ、お願い!」

 不安と期待が入り混じったアリシアの声は、どこか高鳴っていた。

< 87 / 208 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop