離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
 あっという間に月日が流れ、王宮へ出発する日がやってきた。
 この日まで必死にダンスの練習をしたが、正直社交の場で通用するか、アリシアは不安だった。

 王宮までは馬車で数日の道のりだ。途中、宿を取ってあるのでゆっくり町をまわりながら旅をする。
 王都に到着したら侯爵家の別邸に滞在することになる。
 アリシアの衣装は王都の衣装屋にお願いし、いくつか用意してあるらしく、向こうでどのドレスにするか決める必要がある。

 アリシアは昨夜からそわそわしてなかなか眠りにつけなかった。
 あくびを抑えながらどうにか出かける支度をした。

 フィリクスとアリシアは、護衛騎士ふたりをともなって旅立つことになる。

「では、留守をしっかり頼む」
「承知いたしました」

 フィリクスの言葉に、セインが深々と頭を下げて返答した。
 そしてエレナはアリシアのそばで、こっそりと励ますように告げた。

「ご夫婦なのですから、遠慮する必要はありませんわ」
「ええ、ありがとう」

 アリシアはエレナの言葉を胸に刻み、緊張しながら馬車に乗り込んだ。
 しかし案の定、馬車の中ではふたりとも無言のままだった。

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