離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
 フィリクスは、アリシアの問いに一つずつ丁寧に答えた。

「手紙は、すべて読んでいた。返事を出そうとは思っていたが、上手く書けなかった。言葉を綴るのが昔から苦手だ。何度も書き直しているうちに、次の手紙が届いてしまい……」

 それが積み重なり、ますます出せなくなったと彼は言った。

「やがて任務の忙しさを言い訳に、後まわしにしていた。気づいたら、君に一度も返事を出せないまま、帰還の日を迎えてしまった」

 その声音には、悔しさと、どうしようもなかった過去への思いが滲んでいる。
 アリシアは静かに目を伏せて、膝の上で両手をぎゅっと握りしめた。
 次に、フィリクスは食事のことについて語り出す。

「食事をともにしなかったのは、必要だと思わなかったからだ。ただの習慣の話だ。俺は家族と一緒に食事をした記憶がほとんどないから」
「えっ……?」
「幼い頃から、剣の鍛錬や勉強で一日のスケジュールがぎっしり埋まっていた。食事はいつも部屋に運ばれて、ひとりで済ませた。それが当たり前だった」

 フィリクスは父親がほとんど家に帰らないこと、母親が他に男を作って出ていったこと、それらを包み隠さず話し、家族というものがよくわからないと言った。

「だから、君の家族の話を聞きたいと思った」

 フィリクスはおそらくアリシアの家族が正常だと思ったのだろう。
 アリシアは、静かに両親について語った。

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