離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
「アリシア」
「はい!」

 いきなり声をかけられて、アリシアはびくっと反応した。
 その様子を見たフィリクスは自身も赤面し、慌てて顔を背けた。

「お、俺は床で寝る。君はベッドを使うといい」
「それはだめです。旦那様も長旅でお疲れでしょう?」
「平気だ。俺は戦場で野宿もできる」
「ここは戦場ではありません」
「っ……!」

 お互いに言葉に詰まると、おずおずと視線をそらした。

(き、気まずいわ……どうしよう。まさか、こんなことになるなんて……)

 アリシアは気を紛らわすように荷物をほどき、寝間着を取り出した。
 しかし、それを見て顔をしかめる。

(別室だと思っていたから、こんなに薄着……!)

 気まずさに拍車がかかる。
 アリシアは話題を変えることにした。

「旦那様の荷物はずいぶん少ないんですね」
「ああ。王都の別邸に着替えがあるからな」
「……い、今は?」
「ない」

 再びふたりのあいだに沈黙が走る。
 アリシアはまさかと思い、おずおずと訊ねた。

「あ、あの……眠るときは」
「裸だ」

 アリシアは岩のように固まった。

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