離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
 しんと不気味なほどの静寂が訪れる。
 石化したアリシアを見て、フィリクスは慌てて声を上げた。

「誤解だ。下は履いている」
「そ、それはよかったです!」

 思わず反射的に答えたアリシアは、すぐさま自身の発言を後悔した。

(何がよかったの? ちっとも状況はよくないわ!)

 お互いに赤面したまま目を合わせることができず、再び不気味な沈黙が続く。
 アリシアは何かしていないと落ち着かず、無意味に荷物の中身を確認してしまう。
 すると、フィリクスが突然部屋を出ていこうとした。

「旦那様、どちらへ?」
「やはり俺は外で寝る」
「だ、だめです。旦那様にそのようなこと……」
「だが、このままだと俺は君と一緒に寝ることになるぞ」
「嫌ですか?」
「嫌ではない!」

 思わず反射的に返したフィリクスは、狼狽えながら目線を泳がせる。
 アリシアはフィリクスの顔を直視できず、視線を落としながらそっと告げる。

「夫婦なのですから……その、一緒に寝ても、問題ないと思います」

 今度はフィリクスが石化した。

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