引きこもり令嬢の契約婚約
 楽団の奏でる音楽がワルツに変わり、セアラとエリオットはファーストダンスを踊った。

「うん、上手上手」
「でも今足を踏みました、すみません」
「痛くないよ。セアラは軽いから」

 なんとかダンスを終えると、招待客や国内の有力貴族も踊り出す。
 ソフィアはレナルドを伴い、妖艶に微笑みながら踊っている。彼女を狙う男性からの嫉妬の視線を一心に受けているレナルドは、飄々と受け流している。ある意味でとても胆力のある男性なのだろうとセアラは思った。
 会場の隅では、マイルズがソフィアの妹と歓談している。

(楽しそうね。もしかしたらもしかするのかしら……)

 想像すると楽しいことが、たくさんある。自然と笑っていたようで、ふと気づくとエリオットに肩を抱かれていた。

「ご機嫌だね」
「これからが楽しみすぎて。新しい屋敷の庭づくりや、領民のこと。……エリオット様と二人でやっていくんだなぁと思うと、不安よりも楽しみです」
「僕もだよ。……いつか言ったように、僕らには見ている視点が違う時がある。それを重ね合わせれば、よりよい提案をできるって思うんだ。だから僕は、君を頼りにしている。セアラ、一生、僕と一緒に歩んでほしい」
「ええ。もちろんです」

 尊重してくれる相手と出会えたことが、セアラの一番の幸運だろう。
 引きこもっていたころには考えられないほど、明るい未来がここにはある。
 今はただ彼の手を握って、その未来に思いを馳せるのだ。


【Fin.】
 


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