隣に座る許可
第五章 座る権利じゃなく
05 座る権利じゃなく
第5章 座る権利じゃなく
合同イベントの人波が引く。ガーランドが風に鳴り、ベンチの周りに半席分の余白が戻る。
IDストラップを外してポケットにしまう。工具も、もう要らない。
ベンチの前で半歩だけ立ち止まる。彼女がこちらへ歩いてきていた。仕事の顔がほどけ、ただの人に戻る瞬間。
目が合う。掲示の『隣に座る前に、目で合図を』が視界の端で揺れた。
「――座っても、いいですか?」
自分の声は、思ったより小さかった。
彼女は銘板を一度だけなぞり、「うん」と答える。内側に半歩寄った。
すぐ隣に、けれど触れない距離で座る。影の長さが、ゆっくり揃っていく。
「一緒に、並ぼう」
彼女が小さく言う。頷いた。遠くで鐘が一回鳴った気がした。
――隣は、許可で決まる。
合同イベントの人波が引く。ガーランドが風に鳴り、ベンチの周りに半席分の余白が戻る。
IDストラップを外してポケットにしまう。工具も、もう要らない。
ベンチの前で半歩だけ立ち止まる。彼女がこちらへ歩いてきていた。仕事の顔がほどけ、ただの人に戻る瞬間。
目が合う。掲示の『隣に座る前に、目で合図を』が視界の端で揺れた。
「――座っても、いいですか?」
自分の声は、思ったより小さかった。
彼女は銘板を一度だけなぞり、「うん」と答える。内側に半歩寄った。
すぐ隣に、けれど触れない距離で座る。影の長さが、ゆっくり揃っていく。
「一緒に、並ぼう」
彼女が小さく言う。頷いた。遠くで鐘が一回鳴った気がした。
――隣は、許可で決まる。
