スパダリ御曹司は政略妻とベビーに一途愛を証明する

「そういえば、さっきお風呂から楽しそうな笑い声が聞こえていましたよ」
「ああ、朔太郎と遊んでいてね。ボディソープで手のひらに泡の山をつくって、それをふたりで崩したり頬をつけたりして遊んでいたんだ。楽しかったよ」

 思い出しているのか、朔也さんは少し照れたように笑った。

「でもな、湯船に入ったら、今度は急に朔太郎がウトウトしだしてさ。のぼせるんじゃないかってヒヤヒヤした」
「アハハ、食事中も寝落ちしちゃうときがありますもんね。今日は桃花ちゃんとたくさん遊んで、すっかり疲れていたはずなんです。でも朔也さんが帰ってくるまでは、どうしてもスイッチが切れなくて……」

 桃花ちゃんは同じマンションに住んでいる、朔太郎と誕生日が一か月違いの女の子。
 桃花ちゃんママは香さんといって、看護師さんだ。私は妊娠中につわりがひどくて入院したのだけれど、香さんも同じように妊娠中に入院して同室だった。
 そこで同じマンションだとわかって驚き、すぐに仲よくなった。

 そのときから、ずっと頼れるお姉さんのような存在の女性。現在は三年間の育休中だ。
 おかげで、出産してからもほぼ毎日のように親子揃って顔を合わせている。

「今日はどんな遊びをしていたんだ?」

 彼はこれを聞くのが一番の楽しみだとでもいうような表情で聞いてくれる。彼が仕事の日は毎日こう。
 私は口角を上げて、今日の出来事を思い出しながら報告する。

「ふたりでアリを追いかけましたよ。夢中になって、私はつぶしちゃわないか、転ばないかって、もう気が気じゃなくて」
「それは目が離せないな。でも、想像するとなんだか微笑ましい」
「ただ、途中で桃花ちゃんが転んじゃって泣きだしたんです。そのとき、朔太郎が桃花ちゃんの頭を……こう、よしよしってなでて。最後は桃花ちゃんも泣きやんでくれました」

 小さな手で、不器用にも一生懸命に友達を慰めようとする朔太郎を見て、香さんとも思わず顔を合わせて微笑んだ。
 するとそのときの私たちと同じように、朔也さんも優しく笑みを浮かべた。

「きっと、朔太郎は七海の真似をしているんだろうな。普段、七海がそうしてるから。ちゃんと見てるんだ。優しい子に育ってる」

 優しいのは、あなたの方なんだけどな。
 そう思ったものの、口には出せなかった。
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