玄関を開けたら、血まみれの男がいました

事件、再び

 翌日も私と大貫はぎくしゃくしていた。
 変な距離感になってしまうことは何度かあった。被害者と加害者なんだから当然だけれど、それでもまったく口をきかないのは始めてだ。
 喧嘩になるようなことをした覚えはない。それなのに一言も話さず朝を過ごし、無言のまま一緒に職場へ来るのはストレスがたまる。
 大貫は、何を考えてる?
 一緒に職場へ向かう道中、私は歩きながら大貫の横顔を見上げた。
 いつも通り綺麗な顔をしている大貫は、今日はいつもより少し涼し気な表情をしている。笑みとか喜びとかを微塵も感じない冷めた横顔は、知らない人みたい。
 なんでそんな顔をするのよ。
 わたしはただ、大貫ときちんと話したかっただけなのに。
 大貫につられて、私の表情まで暗くなる。
 仕事中、利用者さんにそれを指摘されて、私は無理やり口角を上げた。でもしょせん無理な笑顔は本心じゃない。上手くいかない。今日は利用者さんにもスタッフにも注意されっぱなしだ。
 最悪。
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