完璧御曹司の執愛から逃げ、推しのアイドルと結ばれる方法
 先程の出来事で私のHIROへの感情は冷め切っていたのか、そのニュースを見知らぬ人の不幸のように受け止めた。

 スマートフォンを再び学生鞄に閉まって、運転席の玲さんの方を向く。
 車はエンジンを切って停車して、しばらく時間が経っているようだった。

「玲さん、ここ海?」
「そうだよ。千葉で花火大会があるから見ていかない? 夏らしい事、今年はできていないでしょ」
 夏らしいも何も、私の中の季節感は家庭がめちゃくちゃになってから止まっていた。
 家族で避暑地の別荘でテニスをしたり、島のプライベートビーチに行ったりしたのは遠い過去の記憶だ。

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