真夜中の償い
そんな由里だから相馬が日本に帰ることになってもここニューヨークに残って事業を成功させようとしているのだろう。

でもあくまでも自分らしく人におもねることなく前を向いてしっかりと歩いている。

そんな姿勢にリアムは心が震えた。

なんてすばらしい女性なのだろう。

自分がこの会社を立ち上げた時の最初の仕事を思い出した。

10年以上前の若くて怖いもの知らずの自分を思い出した。

成功して周りの人が自分に頭を下げることが当たり前になった現実が、自分を慢心させ傲慢にしているようで恥ずかしくなる。

初心に帰ろう。由里のスピーチを読んでリアムは素直にそう思えた。

自分はとても恵まれていた。

9歳まで日本に住み両親と3人で何の不安もなく暮らしていた。

でもそれが一瞬で崩れ去った。

リアムが学校に行っている間に両親は交通事故であっけなく亡くなった。

父が日本人母がアメリカ人だったのでその当時は、長森海斗という名前だった学校ではハーフということで、やいやい言われることもあったが元来ガキ大将気質のリアムは、いじめられることはなかった。

両親が死んで母方の祖父母がリアムを引き取って育ててくれた。

アメリカに来たリアムは名前がリアム・カイト・オハラになった。

祖父母の養子として籍を入れたのだ。

二人はアイルランド出身だったが、アメリカに渡ってコロンビアの郊外で、祖父は大工をやっていた。

祖母は心優しい人でリアムは叱られたことがなかった。

二人はアイルランド訛りがあったのでリアムも少しそういうところがある。

アメリカの女性はアイルランド訛りをセクシーだと思うらしい。

リアムは小さなころから祖父について仕事を手伝っていた。

家を作ることが面白く学校が終わるといつも祖父の現場に行って、手伝ったり端材をもらって自分で本棚や巣箱などいろいろ考えて作っていた。

その頃のリアムは大工になるのが夢だった。

でも祖父はリアムは頭がいいのだから大学に行って建築を学んでもっと大きなものを創れと言った。
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