真夜中の償い
そんなことを楽しく話しながら事務所の前に佇んでいると、とてもゴージャスなスーツ、きっとイタリア製の超高級なブランドものだろうーを着た男性が目に入る。

ネクタイも同じブランドの新商品だ。

由里は仕事柄そういうものに詳しい。

前の会社の取締役が常に近くにいたので必然的に詳しくなった。

役員が新しいスーツやネクタイを身に着けていれば素敵だと、褒めるのが当たり前になっていたので、女性物よりも詳しくなった。
そんな高級ブランドのスーツを着た本人もスーツ以上にゴージャスだ。

そんな男性がまっすぐこちらに歩いてくる。

ミッシェルはぽかんとして彼を見つめている。

おいおいと心の中で突っ込みながら由里までぽかんとしているわけにいかず、笑顔で彼を迎えた。

「やあ、君がここの責任者かな?相馬さんの元部下の?」とちょっとセクシーな声

「はい、鈴木由里と申します。あなたは相馬さんのお知り合いですか?」

「失礼、こういうものです」と言って名刺を渡された。

RKOカンパニー・CEOリアム・オハラとある。

「あ~っ、あなたがこのビルのオーナーのミスターオハラ?すみません。ご挨拶もしないで、そしてありがとうございます。こんなに素敵なところをほんとにお値打ちに貸していただいて感謝しています。お礼にお伺いしたいと相馬さんにお願いしたんですが、なかなか会えない人だからっておっしゃって…今日相馬さんは日本に帰られました。あなたにお会いできたらよろしくお伝えするように言われています」

「いや、別にそんな事気にしなくてもいいよ。近くまで来たから、プランナーという君の仕事にも興味があったし日本人の女性がニューヨークで一人で会社を立ち上げるなんて、ちょっとそれにも興味を引かれて来てみたんだ。すっかり準備は整ったの?」

「はい、中は何とか。でも外がまだ何のオフィスかもわからないですよね。外の看板とか出してもいいのかもよくわからなくて、今考え中です」

「外の看板は遠慮してもらってると思う。何かわからないことや相談したいことがあればいつでも電話して、とりあえず君の連絡先とか聞いてもいい?相馬さんによろしく頼むといわれているんだ。僕のプライベートの連絡先は名刺の裏に書いておくよ」
リアムはそう言って、先ほどの名刺の裏に携帯の番号をサラッと書いてくれた。

「すみません。まだ名刺ができていなくてちょっと待ってください」

由里は丁度手に持っていた会社案内の小さなパンフレットに携帯の番号を書き入れて渡した。

彼はYSプランニングの会社案内を見て

「ふ~ん、プランナーって何でもやるんだね。個人的なホームパーテイなんかも?」

「ハイ、丁度今前の会社のCFOからご両親の結婚50周年をお祝いするパーテイのご依頼を受けているんですよ」

「ミスターバートンの?」

「ご存じですか?」

「君のもと居た会社の役員とはみんな顔見知りだよ。おっと、もうこんなに時間がたってしまったね。戻らないとミスターバートンのパーテイではまた会えるかもね」

そう言ってリアムは去っていった。
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