万能フライパンで王子の胃袋を掴んだ私、求婚を断って無双する!
「エルベルト様がご病気で、なにも食べられないですって? それでミアに来てほしいと?」
「どうしたらいいでしょう」

「ぜひ参上なさいな。エルベルト様はこの国の第一王子、大切なお方よ」
「前はそんなこと言ってませんでしたよね!?」
「そうだったかしら」
 戸惑うカーラに、素で言うのを忘れていたんだろうな、とミアは思う。

「兄弟でも他人行儀なんですね。王族だから?」
「違うと思うわ。エルベルト様のお母様はすでにお亡くなりなのだけど、身分が男爵令嬢で低かったの。エルベルト様が十三歳のときに陛下が再婚なされて、その方がアルバ様のお母様なのだけど、実家が侯爵でいらして、それで遠慮なさっておられるようなのよ」

「年齢差があるとは思いましたけど、そんな事情が」
「アルバ様は御年五歳。エルベルト様は二十歳で十五歳差なの。仲が良くていらっしゃるのだけど、貴族の間では次の王位を継ぐのはエルベルト様かアルバ様かで議論があってね。普通ならエルベルト様なのだけど……」

「周りの思惑に振り回されるのってかわいそうです」
「暗殺も危惧されていて、毒を盛られたこともあるのよ。だから食事も細くおなりで」

「毒……あのときも気にしてました」
 ミアは眉間に皺を寄せた。
 食べないと生きていけないのに、その食事に不安があるのはどれほどつらいだろう。

「私、食事を作って差し上げたいです」
「ええ、もちろん。すぐに準備をしなくてはね」
 カーラが代理で返事をしたためて使者を出した。高貴な方に出す手紙の作法などミアにはわからないからだ。

 翌日、ミアはフェルギーニ家の馬車で家を出た。
 絶対に病気が治る料理を作る。そして、ふたりに安心して楽しく食べてもらおう。
 手にはフライパンを握りしめ、エルベルトとアルバのふたりの笑顔を思い描いていた。





第一話 終
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