「好き」があふれて止まらない!
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昨日、何も言わずに音楽室から逃げ帰ったわたしは、ぶつぶつと呪文のように同じ言葉を繰り返しながら昇降口の付近をうろついていた。
「まずは謝って、その次に曲を聴かせてもらったお礼を言って⋯⋯」
胸に抱えるクリアファイルの中身は今朝、拾い集めたルーズリーフ。
次々と生徒が登校してくる中、我妻くんがギターを背負って歩いてきた。
こんなところで声をかけたら目立つとわかっているのに足は自然と動き出す。
女の子たちからの挨拶に笑顔ひとつ見せない我妻くんは、わたしが目の前に立つと目を見開いた。
「⋯⋯比高」
「昨日は何も言わずに帰ってごめん。あ、あの。少しお時間よろしいでしょうか?」
「⋯⋯は?」
わたしの予想どおり昇降口にいた人たちの視線が一気にわたしたちへと集中する。
「我妻くんに見てもらいたいものがあって」
「何?」
「えっと⋯⋯その歌⋯⋯」
「奏人くん。その子、誰?」
わたしの声は女の子の甲高い声にかき消された。
声のしたほうに視線を向けると毛先だけがクルクルと巻かれたツインテールの髪が目に入る。