「好き」があふれて止まらない!
はっきりとした気持ち【我妻side】
MEBIUSに律が加入してから騒がしいのがふたりになった。もうひとりはもちろん新。
コンクールで何度も受賞経験のある律のピアノは、人の心を一瞬で捉えてしまうような言葉にはできない魅力があった。
音楽に対する情熱もあっていい奴だ。
律が加わってMEBIUSの楽曲はもっと磨かれていくだろう。
それなのに俺の心中はあまり穏やかではなかった。
「なぁ、咲茉」
「咲茉、これってさ」
「咲茉、ちょっと来て」
音楽室にいると嫌でも咲茉を呼ぶ律の声が耳に入る。
過激なファンの行為によって一度はピアノを弾くことを諦めた律は、そのトラウマのせいで女子が苦手らしい。
だけど、咲茉に向ける眼差しだけは優しくて、律にとって咲茉が特別な女の子だと気づくのにそう時間はかからなかった。