温泉街を繋ぐ橋の上で涙を流していたら老舗旅館の若旦那に溺愛されました~世を儚むわけあり女と勘違いされた3分間が私の運命を変えた~
「せっかくだから、二人で食べましょう。すずさんの分も買ってきてね」
「ありがとうございます! 行ってきます」
 
 大判のストールを首に巻き付け、草履からブーツに履き替えた私はうきうきした気分で外へ出た。

 雪は降っていなかった。
 道沿いの旅館はどこも優しいオレンジの該当に照らされ、観光客もほとんどいない道を急いで下る。
 吐き出す息は当然、真っ白だった。
 横浜とは違うキンッと冷えた真冬の空気を吸い込み、もぞもぞとストールを顔まで引っ張りあげた。

 ストールじゃなくて、そろそろ耳当てを用意した方がいいかもしれない。耳当てつきの毛糸の帽子や、もこもこのフード付きマフラーなんていうのもいいかも。
 これからますます寒くなるだろう。

 結び橋に差し掛かった時、ふと足を止めた。

 赤く染まった欄干が白く染まっている。
 そっと雪をどけて、冷えきった欄干に触れてみた。

「人生なにがあるか、わからないもんね」

 顔をあげた先に星の煌めく空があった。
 あの日、橋で三分かそこらぼーっとしていただけなのに、生まれ故郷の横浜から遠く離れ、ここで生きていきたいと思っている。
< 62 / 64 >

この作品をシェア

pagetop