温泉街を繋ぐ橋の上で涙を流していたら老舗旅館の若旦那に溺愛されました~世を儚むわけあり女と勘違いされた3分間が私の運命を変えた~
 都会の華やかさはないけれど、賢木屋の皆さんには温かさがある。

 賢木屋で働いている人たちの顔、そして、一鷹さんの笑顔を思い浮かべると胸の奥が暖かくなった。
 一鷹さんに打ち明けよう。

 貴方が好きです。これからもずっと、賢木屋で働かせてください。

 結び橋に決意を伝えながら、一鷹さんは喜んでくれるかな、どんな顔をするだろうって考えた時だった。

「すず! 早まるんじゃない!」

 既視感を覚えて振り返った。
 あの日と同じで、橋の向こうから近づいた彼が私の手首を掴んだ。
 強い力に引き寄せられ、街頭に照らされた結び橋の真ん中で、私は一鷹さんの胸に倒れ込んだ。

 ああ、また勘違いさせちゃったみたい。

「……一鷹さん、あの……」
「俺が悪かった。すずを困らせる気はなかったんだ。信じてくれ。だから早まるな。命を粗末にしないでくれ!」
「えっと、あの、一鷹さん」
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