君を隠したあの夏

第3.5章:冬の机の下で手を繋ぐ日々

冬の冷たい空気が教室に差し込み、窓際の席には淡い光とともに白い息が漂う。
由埜華はいつものように隣の青郎の席に座り、ノートを開いた。
外は寒くても、二人の間には秘密の温かい空気が流れていた。
授業中、ふとした瞬間に机の下で指先が触れる。
誰にも見えない距離で、そっと手を握る。
由埜華の心臓は跳ね、青郎も少し照れながら握り返す。
この小さな触れ合いだけで、世界が静かに温かくなるような気持ちだった。
休み時間、教室の隅で二人はこっそり話す。
「今日の理科のテスト、どうだった?」
「まあまあかな。由埜華は?」
「うーん、青郎の方ができたんじゃない?」
些細な会話でも、隣にいるだけで心が満たされる。
でも、秘密を守る緊張感も常にあった。
友達が近くを通るたび、指先をぎゅっと握り返す。
笑い声や話し声に、少しだけ心が震える。
「見られたらどうしよう……」
由埜華は内心でドキドキしながらも、手を離さない。
ある日、青郎が小声で囁く。
「由埜華、寒いから手、貸すよ」
机の下で握った手が温もりを伝え、由埜華は思わず顔を赤くした。
誰にも言えない秘密だけど、二人にとっては特別な時間。
放課後も、廊下や階段ですれ違う瞬間に小さく手を握る。
笑顔を交わすだけで心が弾む。
その距離の近さが、二人の絆をさらに強くしていった。
冬の教室は静かで、外の冷たい風とは裏腹に、二人だけの世界は暖かかった。
由埜華は心の中で誓う。
「この秘密を、絶対に守ろう。青郎と一緒なら、どんなことでも平気」
そして、教室の窓から差し込む夕陽に照らされながら、
二人の手は小さな勇気と愛の証として、そっと繋がれていた。
――こうして冬の間、二人だけの甘く切ない時間は静かに積み重なっていく。
この日常の小さな幸せが、やがて修学旅行や中3での切なさに深くつながる。
由埜華は、胸の奥でその未来をまだ知らずに、ただ今の温もりを大切に抱きしめていた。
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