君を守る契約
仙台空港に到着すると、冷たい風が頬を撫でた。東京よりも空気が澄んでいる気がする。
到着ロビーで幸也がすぐに見つかった。大学生になって少し背が伸び、表情も大人びて見える。私たちが見えると片手をあげ、合図してくれた。
「姉ちゃん!」
声をかけられた瞬間、胸の奥がぎゅっと締めつけられた。久しぶりに聞く声になんだか涙が出そうになってしまう。
けれど、その視線が私ではなく隣の宗介さんへ向いた時、空気が一瞬だけ張り詰めた。
「そちらが、姉ちゃんの……?」
幸也の問いに、宗介さんは穏やかな笑みを浮かべた。
「初めまして。松永宗介と申します。今日はお時間を作ってくださってありがとうございます」
その声はいつもより少し低くて、丁寧だった。幸也は驚いたように目を瞬かせ、それから小さく頭を下げた。
「こちらこそ。姉がお世話になってます」
そのやりとりを見ているだけで、胸の奥がじんわりと温かくなった。幸也はかなり警戒していたようだが、宗介さんの丁寧な様子に一瞬にして落ち着きを取り戻したように見えた。
空港の近くにある小さなカフェで、私と宗介さんは横並びに、宗介さんの前に幸也が座る。
幸也はまだどこか緊張しているようで、コーヒーを両手で包みながら宗介さんを観察していた。
「姉は……その……ちゃんと食べてますか?」
思わず吹き出しそうになった。子どもみたいな質問に宗介さんは優しく笑う。
「はい。むしろ僕の方がたくさん食べさせてもらっています」
その答えに、幸也は拍子抜けしたように笑った。その笑顔を見た瞬間、私は胸が詰まった。
きっと幸也も心配していたんだ。ひとりきりになってしまった私が、また笑っているかどうかを。
──その後、宗介さんが席を外したタイミングで、幸也が少し声を潜めて言った。
「……姉ちゃん、ほんとに幸せそうだな」
たったその一言で、涙が出そうになった。言葉にできない感情が胸の奥で溢れてくる。
“仮の結婚”なのに、幸也の前ではそれが“本物”のように見えている。
それはきっと宗介さんが真摯に向き合ってくれているから。
私は小さく頷いた。すると幸也も「よかったな」と私の顔を見て笑っていた。
そして、宗介さんが戻ってくると幸也はほんの少しだけ照れくさそうに頭を下げた。
「姉のこと、よろしくお願いします」
宗介さんはまっすぐ幸也を見て、ゆっくりと頷いた。
「もちろんです。大切にします」
その一言に、息が止まった。“契約”のはずなのに、その声はどこまでも真っ直ぐだった。そして私の心の奥にグッと刺さった。
到着ロビーで幸也がすぐに見つかった。大学生になって少し背が伸び、表情も大人びて見える。私たちが見えると片手をあげ、合図してくれた。
「姉ちゃん!」
声をかけられた瞬間、胸の奥がぎゅっと締めつけられた。久しぶりに聞く声になんだか涙が出そうになってしまう。
けれど、その視線が私ではなく隣の宗介さんへ向いた時、空気が一瞬だけ張り詰めた。
「そちらが、姉ちゃんの……?」
幸也の問いに、宗介さんは穏やかな笑みを浮かべた。
「初めまして。松永宗介と申します。今日はお時間を作ってくださってありがとうございます」
その声はいつもより少し低くて、丁寧だった。幸也は驚いたように目を瞬かせ、それから小さく頭を下げた。
「こちらこそ。姉がお世話になってます」
そのやりとりを見ているだけで、胸の奥がじんわりと温かくなった。幸也はかなり警戒していたようだが、宗介さんの丁寧な様子に一瞬にして落ち着きを取り戻したように見えた。
空港の近くにある小さなカフェで、私と宗介さんは横並びに、宗介さんの前に幸也が座る。
幸也はまだどこか緊張しているようで、コーヒーを両手で包みながら宗介さんを観察していた。
「姉は……その……ちゃんと食べてますか?」
思わず吹き出しそうになった。子どもみたいな質問に宗介さんは優しく笑う。
「はい。むしろ僕の方がたくさん食べさせてもらっています」
その答えに、幸也は拍子抜けしたように笑った。その笑顔を見た瞬間、私は胸が詰まった。
きっと幸也も心配していたんだ。ひとりきりになってしまった私が、また笑っているかどうかを。
──その後、宗介さんが席を外したタイミングで、幸也が少し声を潜めて言った。
「……姉ちゃん、ほんとに幸せそうだな」
たったその一言で、涙が出そうになった。言葉にできない感情が胸の奥で溢れてくる。
“仮の結婚”なのに、幸也の前ではそれが“本物”のように見えている。
それはきっと宗介さんが真摯に向き合ってくれているから。
私は小さく頷いた。すると幸也も「よかったな」と私の顔を見て笑っていた。
そして、宗介さんが戻ってくると幸也はほんの少しだけ照れくさそうに頭を下げた。
「姉のこと、よろしくお願いします」
宗介さんはまっすぐ幸也を見て、ゆっくりと頷いた。
「もちろんです。大切にします」
その一言に、息が止まった。“契約”のはずなのに、その声はどこまでも真っ直ぐだった。そして私の心の奥にグッと刺さった。