用済みだと捨てたのはあなたです、どうかおかまいなく~隣国で王子たちに愛されて私は幸せです~
「えっ!?」
(どうして王太子殿下が……?)
 予想外の人物に、驚きのあまり声が出て、アランと顔を見合わせた。
 顔をしかめ、不快感を露わにしたその表情に、胸がざわつく。
 またしてもアランに迷惑をかけてしまっている。
 そのことが、エレインの気分をひどく落ち込ませる。
「エレイン! いるんだろう! どうか俺に少しだけ時間をくれないか!」
 大きな声が、馬車の中にまで聞こえてきた。
 それは、まぎれもなく王太子ダミアンの声だった。
 アランは大きなため息を吐いて頭を抱える。
「先ぶれもなく会いにくるなんて非常識にもほどがあるな」
 知らぬとはいえ、王族の乗った馬車を停めて進路を妨害するなど非礼極まりない。
「も、申し訳ございません、私が王太子殿下と話して参りますので」
 腰を浮かせたエレインの腕をアランが掴む。
「一人では危険だ、俺も行こう」
「いえ、私一人で大丈夫です」
(これ以上、殿下のお手を煩わせられない)
 本当は、エレインも一人で王太子に相対するのは少し怖かった。
 もしかしたら、ハーブのことで文句を言われるかもしれない。それだけならまだいいが、責任を取れとか理不尽なことを言われそうで不安だ。
「だが」
「一国の王太子ともあろうお方が、衆目のあるところで危害を加えるようなことはなさらないはずですので」
 ましてやここは自国ではない。
 下手なことをすれば、危ないのは自分の身だ。
「私もご一緒します!」
 そう申し出てくれたニコルと共に、エレインは馬車から降りた。
< 117 / 150 >

この作品をシェア

pagetop