用済みだと捨てたのはあなたです、どうかおかまいなく~隣国で王子たちに愛されて私は幸せです~
「こうして一緒に城の外にでかけるのは、教会の視察以来だね」
 言われて、アランとテオと三人で出かけた日が鮮明に思い出される。
 エレイン自身、誰かとあんな風に街を散策したのは初めてで、強く記憶に残っていた。
 楽しくて愛おしい時間は、エレインの胸の中で色鮮やかに仕舞われている。
「その髪飾りも気に入ってくれているみたいで、よかった」
「はい、大切に使わせていただいています」
 あの日に露店でアランに買ってもらったバレッタも、ほぼ毎日のように髪に付けているほどお気に入りだった。
 贈り物に特別な意味などないとわかっていても、エレインにとっては宝物だ。
 あれからもう数か月経っているのが、月日の流れの早さを感じさせる。
「俺もきみに選んでもらったこれ、気に入ってる。ありがとう」
 アランの襟元で光るそれは、露店でエレインが選んだラペルピン。
 時おり使っているのを、エレインは知っていた。
 でも、それを口にするのは恥ずかしくて言えずにいたのだ。
「私は選んだだけですが……、とてもよくお似合いです」
 アランの瞳の色を濃くしたような螺鈿細工が、調和が取れていて本当に似合っている。
 エレインの言葉に、アランは「ありがとう」と嬉しそうに目を細めた。
 アランの側は居心地がよくて、エレインも自然と頬がほころぶ。
 家族や王太子と居たときは、なにを言われるのか、されるのかと常にびくびくして片時も休まらなかった。
 気が抜けないから笑えるはずもなく、表情は常に強張っていただろうと思う。
 それが今は嘘のように、心穏やかに過ごせているのがこの上ない幸せだった。
 と、和やかな雰囲気が一転、馬車が急停車する。
 ハーブ園に着くにはまだ早い。
 窓から外を伺うアランの表情は険しかった。
「恐れ入ります」と外からの呼びかけに、アランは先を促す。
「ヘルナミス国の王太子を名乗る者が、エレインさまに面会を求めています」
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