用済みだと捨てたのはあなたです、どうかおかまいなく~隣国で王子たちに愛されて私は幸せです~


 翌日の早朝、エレインは王宮内にあるハーブ園に一人で来ていた。昨日の内にアンに道を聞いていたので迷うことなくたどり着けた。
「すごい広い!」
 丘を上った先に見えたハーブ畑の広さに、エレインは思わず声をあげた。
 夏でも暑くなり過ぎず、適度に雨も降るこの国は、母国と違って土がたっぷりの水を蓄えていて柔らかいため、たくさんの種類のハーブがすくすくと育っているのが遠目でもわかる。
 そしてもちろん、精霊の姿も多いし生き生きとしていた。
 エレインを歓迎してくれているのか、近寄ってきては明滅してその存在を主張しているようだ。
(さすがに全部は厳しいかしら……)
 エレインが【精霊の力】を借りるとき、少なからず体力が消耗される。自分の持つなにかが【精霊の力】の源になっているのかもしれない、とエレインは考えている。
 あまり一度に使い過ぎると、熱が出たり、酷いときには倒れることもあった。
 王宮のハーブ園は、エレインが予想していたよりもずっと大きいため、一度に全部のハーブに力を使うのは難しいかもしれない。
(今日は無理せず、できる範囲でやればいいわよね)
 そう決めて、エレインは丘の上で両手を広げた。
「ふわふわさん、少しだけ力を貸してくれる?」
 その声で、精霊たちはハーブの上へと散らばって輝きを増していく。そして、砂のように細かな光がハーブに降り注がれた。
 いつ見ても美しい光景に、エレインはほう、と感嘆の溜息を零す。
「あら? 全部できたみたい?」
 力をセーブしたつもりだったのに、光はハーブ畑全体を覆っていたように見えた。
 いつもであれば、軽度の倦怠感に見舞われるはずだがそれもなくて、不思議に思う。
(ふわふわさん達が頑張ってくれたのね、きっと)
 そう解釈したエレインは、精霊たちに「みんなありがとう」とお礼を言って王宮へと戻った。
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