用済みだと捨てたのはあなたです、どうかおかまいなく~隣国で王子たちに愛されて私は幸せです~
 ハーブが悪くなりはじめたのは、エレインがいなくなってから数週間後。
(エレインは、なんと言っていた?)
 婚約破棄をした日、褒美をやると言われてエレインが口にした願い――。
 ――今出荷を控えているハーブは(・・・・・・・・・・・・・)、貧しい国民の手に渡るよう教会や薬局を優先に安価で卸していただけないでしょうか。
 エレインのことだ、貧民への支給を永続的に願い出てもおかしくないはずが、一度きりしか願わなかった。
(まさか……こうなることを、予測していた……?)
 だとすれば、すべての辻褄があうのではないか。
 エレインが居た時はすくすくと育っていたハーブ。
 いなくなってから悪化し、今にも枯れそうになっているハーブ。
 まるでハーブの質が悪くなり、枯れていくのを予測していたかのような発言。
 口をそろえて『あのハーブはエレインにしか作れない』と言う領民たち。
「魔法など……」
 部下は、あり得ない話だと失笑する。
「もういい、下がれ」
 部下が退室し静かになった執務室で、ダミアンはわなわなと震える体を必死に抑え込んでいた。
「――はっ、エレインだと……?」
(一体、どれだけ俺を馬鹿にすれば気が済むんだ!)
「ふざけやがって!」
 怒りを抑えきれず、ダミアンは力任せにデスクの上のものを腕で薙ぎ払った。書類やペン、ティーカップなどが音を立てて床に落ちていく。
 なおも納まらない荒ぶる感情を制御できなくなったのか、ダミアンは声をあげて笑いだした。
「はははははは! 面白いじゃないかあの女! いいぞ、魔法でも手品でもなんでもいい! ぜひともその力を俺のために使ってもらおうじゃないか!」
 その後もしばらく、執務室からはダミアンの笑い声が聞こえてきていた。
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